舌苔(ぜったい)を減らす事が新型コロナウイルスの感染予防になる?!

舌苔(ぜったい)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

舌苔とは、舌の表面にある凸凹に口内の細菌が堆積して苔状になったものです。この細菌が口臭の原因になったり、最近では細菌の塊である舌苔を取り除くことが新型コロナウイルスの感染予防につながるということがいわれています。

今回は、この舌苔について詳しくお話しします。

舌苔は口内の細菌が舌に堆積して苔状になったもの

舌苔とは、舌の表面にある凸凹に口内の細菌が堆積して苔状になったものです。口内の皮膚が剥がれてできた垢・食べ物のカス・唾液の成分・細菌・微生物などが溜まって形成されます。舌苔は、細菌のすみ家となり舌に強く付着するため、うがいだけでは簡単に取れません。

正常な舌は白く薄く舌苔がついている状態

舌苔が白く薄くついている程度は、無理にとる必要はありません。むしろ舌苔がない事の方が問題で、免疫力が下がり貧血などを起こしやすく体が衰弱している状態です。舌苔は、厚みが出てくると黄色くなる傾向にあり、そういった場合は嫌な口臭の原因にもるので、適度に取り除いた方が良いです。

口臭の原因の6割は舌苔によるもの

口臭の主な原因は、口の中にある嫌気性菌という種類の細菌がタンパク質やアミノ酸を分化して揮発性硫黄化合物(VSC)という物質をつくることです。この物質が作られる原因は、歯周病と舌苔がほとんどを占めており、舌苔からの産生量の方が多いといわれています。

口臭以外にも、舌苔が溜まり過ぎていると味覚障害や、舌の接触痛などの舌炎などのほかの病気につながる危険があります。なんと世界的な流行をみせている「新型コロナウイルス」も舌苔が多いほど感染しやすくなるといわれています。

舌苔には新型コロナウイルスに感染しやすくする酵素が大量に存在する

新型コロナウイルスは細胞表面のタンパク質ACE受容体にくっついて細胞に侵入します。このACE受容体は口腔粘膜よりも舌の表面に特に多いといわれています。唾液の研究で知られる槻木恵一・神奈川歯科大学副学長は「歯と口の健康シンポジウム2020」(日本歯科医師会主催)で、「舌に付く細菌の塊である舌苔には、新型コロナウイルスが感染しやすくなる酵素が大量に存在する」と話しています。

「歯と口の健康シンポジウム2020」(日本歯科医師会主催)より引用

新型コロナウイルスが私たちの細胞へ侵入するためには、ACE受容体以外にもタンパク質分解酵素(TMPRSS2)が必要で、舌苔にはこの酵素(TMPRSS2)が多く含まれるといわれているのです。このことから、舌苔を取り除くことは新型コロナウイルスの感染予防につながるといわれています

そもそも、この細菌の塊である「舌苔」を作ってしまう原因には何があるのでしょうか?

舌苔の4つの原因

1.舌の組織の凸凹が大きい

本来は唾液の自浄作用が働くのですが、舌表面が角質化していると「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」の凸凹が深くなり汚れや食べカスなどが溜まりやすくなり舌苔が出来やすくなります。舌磨きをし過ぎている場合でも、舌表面の角質化につながるので注意が必要です。

2.細菌の繁殖

加齢などにより唾液が減少すると、口腔内細菌が繁殖しやすくなります。細菌が増えると舌苔も増殖して舌の表面組織に溜まってしまいます。食べカスや上皮のカスのタンパク質は、細菌のエサになります。

3.低舌位や口呼吸(口腔乾燥)

舌の筋力が弱いと舌が上アゴに引き上げられず、舌が下がった状態の低舌位になってしまいます。低舌位になると舌が上顎と擦れたり唾液で洗い流されることも少ないため、舌苔が付きやすくなります。

また、舌が落ちることで会話や咀嚼、飲み込む機能が低下し、口が閉じにくくなるので口呼吸にもなります。口呼吸をしていると、お口の中が乾燥しがちになります。口腔乾燥は、舌表面の汚れを停滞させるだけではなく、細菌の繁殖も促すことから舌苔が生じやすくなります。

4.抗生物質の影響

抗生物質やステロイド剤を長期間服用している人は、お口の中にいる細菌の種類が変わってしまいます。その際に黒毛舌という黒い舌苔が沈着する原因になることがあります。

舌磨きでお口の細菌を減らそう

●舌クリーナー(舌磨き専用のブラシ)

舌表面はやわらかく繊細なので、歯ブラシでこすると傷つける恐れがあります。舌磨き専用のブラシは、歯ブラシに比べて細くて柔らかい毛先やゴム状の先端部になっており、舌の表面を傷つけない形状になっています。歯ブラシを使う場合は、毛先がやわらかいものを選びましょう。

ゴシゴシ磨きは厳禁!舌は優しく撫でるように磨く

舌磨きの基本は、舌ブラシまたは歯ブラシを使ったブラッシングです。鏡を見ながら行うと舌苔の色や量を確認しやすいです。ブラシを手前から喉の方に動かすと、舌苔の中の細菌を喉の奥に送り込んでしまう可能性があるので、舌の根元から手前に向かって動かしましょう。その時に、ゴシゴシと強い力で磨いてしまうと、舌が傷つき剥がれた細胞が舌の表面に蓄積し、舌苔が増える原因になるので注意が必要です。

舌磨きのタイミングは朝食前がベスト!

舌磨きを行うタイミングは、朝食前がベストです。就寝中は唾液の分泌が減ることで細菌が繁殖しやすい状態になります。そのため、起床時の口の中は驚くほど汚れています。舌全体に細菌が付着した状態のまま朝食をとると、食べ物と一緒に細菌を飲み込んでしまう可能性があるので、朝食の前にお口の中はキレイにしておきましょう。

舌苔を減らすための口腔ケア

●マウスウォッシュ(洗口液)

マウスウォッシュで口をゆすげば、舌に棲みつく細菌の増殖も抑えられます。そして、お口を潤す事もできるので、口の渇きによる口臭予防にも効果的です。当院では、患者さまに2つのマウスウォッシュ(洗口液)をおすすめしています。

「SPーTメディカルガーグル」

お口の中とのどを殺菌、消毒、洗浄できるうがい薬です。歯周病や口臭が気になる方におすすめです。お口の中にさっぱりとした清涼感を与えてくれ、透明な液体なので洗面台も汚しません。

【使い方】1日数回、水約100mLに本品約0.5mL(6~10滴)を滴下し、よくかき混ぜた後、うがいして下さい。

「コンクールF」

高い殺菌量が持続する洗口液です。虫歯や歯周病や口臭が気になる方におすすめです。お口に優しくピリピリしないので、しっかりすすげます。辛いのが苦手な方にもピッタリです。

【使い方】1日数回、約25~50ml(コップ約1/8~1/4位)に(5~10滴)を滴下し、よくかき混ぜた後、うがいして下さい。

●乾燥対策

お口の乾燥が舌苔につながります。マスクをつければ口の乾燥が防げ、寝ているときなどの無意識に口呼吸をしてしまっているときでも有効です。また、保湿剤をドラッグストアや歯科医院で手に入れて使用する方法もあります。当院では、歯磨き粉としてももちろん、保湿剤としても使えるオーラルピースをご紹介します。

「オーラルピース」

オーラルピースは飲み込んでも安全な水と植物由来の食品のみで作られ、化学合成成分・アルコールも無添加なのでお子さまから大人まで幅広い世代で使える歯磨き粉です。歯磨きの後に、清潔な指やスポンジブラシに適量を取り、口腔内に満遍なく塗布します。就寝中は唾液の分泌が少なくなり、口腔内の原因菌が増殖しやすくなっています。就寝中や唾液が少なく乾燥してしまう時に塗布すると効果的です。

まとめ

舌苔は、細菌の塊なのでお口の環境を整える面でも適度に取り除く方が良いと思います。また舌苔は、新型コロナウイルスにかかりやすくなる酵素を多く出しているため、感染予防対策としても舌磨きで舌をキレイにしておくことは大切だと思います。

舌磨きは、舌クリーナーや柔らかい毛先の歯ブラシで、撫でるように優しい力で磨き、舌を傷つけないようにしましょう。舌苔を減らし、新型コロナウイルスが入ってきにくい口腔環境を整えるためにもマウスウオッシュ乾燥対策もぜひ取り入れてみてください。

舌苔の取り除き方や、お口の状態など気になる事があれば、いつでもお気軽にご相談ください(^ ^)普段の歯磨きに舌磨きも加えて、歯だけでなく舌もキレイにしましょう!

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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