歯医者さんの定期検診について

歯医者さんで、治療がひと通り終わると、必ず定期検診に来てくださいと言われますが、「行くのがめんどくさい。」「定期検診って本当に必要なの?」「定期検診の頻度は何回が良いの?」「定期検診の料金は?」など、歯の定期検診に対して色々と疑問や不安に思われる事があると思います。
そこで、今回は定期検診について詳しくご紹介したいと思います。

歯医者さんの定期検診は何をしてるの?

当院の定期検診では、国家資格を持った歯科衛生士が40〜60分のお時間を頂いて以下のことを行なっています。

①歯周病の検査

歯周病の状態を知るためには専門的な検査が必要です。
歯茎の状態や出血の有無、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さや
歯のぐらつき(動揺度)などを調べます。

1.レントゲン検査

歯を支えている骨の状態を調べる検査です。
歯周病は、歯を支えている骨を溶かす病気なので、現在の骨の状態を確認することが重要です。

2.口腔内写真

レントゲンで再現出来ない歯の状態や、歯茎の色、形態を確認するため、
口腔内の写真を撮影致します。
また、治療前と治療後の経過観察のためにも非常に重要です。

3.歯周ポケット検査

歯と歯茎の溝の深さを計測することで、どの場所の歯周組織に異常があるかを判定します。
4mm以上の深さの場合は歯周病が進行する可能性が高くなります

4.出血検査

歯茎の出血を確認します。
出血の有無により炎症がある場所を判定します。
出血がある場所は、歯周炎の可能性が高くなります。

5.動揺度検査

歯の揺れの大きさを調べます。
揺れが大きいと、歯を支える骨やその周りの組織が炎症を起こしたり、傷ついていたり、歯周病の影響を受けていることを示します。

②歯石除去

歯周病の検査で口腔内の状態を検査した後に、
歯石が確認できる場合は、歯石を除去していきます。

スケーリング

歯の見えている歯茎より上の部分(縁上)の
歯石除去をスケーリングといいます。
歯石が確認された方には、スケーラーと呼ばれる器具を使用して、
主に歯の表面の歯石やバイオフィルム(細菌の塊)を除去していきます。

③歯面清掃(ポリッシング)

歯垢(しこう)をそのままにしていると歯石になります。
磨き残しによる歯垢が、歯石になってしまうと日常のブラッシングでは取れません。
歯石は表面がデコボコしているのでさらに歯垢が付きやすくなり、歯周病を悪化させます。
定期検診できれいに歯のクリーニングをし、口腔内を健康な状態に保つようにします。

④ブラッシング指導(TBI)

歯科衛生士さんから正しい歯磨きの仕方を指導してもらいます。
毎日歯磨きをしているから大丈夫と思っていても、
ご自身の歯の状態、歯茎の状態により適切な歯磨きの仕方があります。
正しいブラッシングの方法でプラークコントロールをしましょう。

歯医者さんの定期検診の適切な頻度は?

定期検診に通う頻度は、歯周病や虫歯のリスクの高さや、ご自宅できちんと歯磨きが出来ているか、歯茎が腫れやすい傾向にあるかなど、お口の環境によって違ってきます。

①一般的には3ヶ月に1度が適切

予防歯科先進国であるスウェーデンなどの研究論文などで、歯周ポケット内の歯周病の原因となる細菌の数は、3ヶ月で元の値まで戻ってしまうという研究があり、一般的に定期検診の頻度を3ヶ月に1回にしている根拠となっています。

②お口の環境が良い方は半年に1度でもOK

一般的には3ヶ月に1回の来院が目安ですが、ブラッシングが上手で口腔内の環境が良い方、歯周病や虫歯のリスクが低い方は半年に1回の受診でも大丈夫です。

③虫歯や歯周病のリスクが高い人は?

残念ながら、口腔内の環境があまり良くない方は、まず、しっかり通って頂き、口腔内の環境の改善から初めていきます。
頻度は患者様の口腔内によりしっかり判断しないといけませんが、まずは3ヶ月より短い間隔で定期検診を受けて頂きます。
その後、改善がみられたら通院の間隔をあけながら様子をみていき、その方に適した通院間隔を見極めていきます。

歯医者さんの定期検診の料金は?

歯の定期検診は、健康保険が適用されるため、3割負担の方の場合で1回3,000円ほどで受けることができます。
虫歯や歯周病の治療が必要になった時のことを考えると、定期検診を受診してしっかり予防したり、早期発見ができる方が、圧倒的に医療費を抑えられます。

歯医者さんの定期検診を受けなかったら?

ご自宅でのブラッシングやセルフケアは非常に大切です。
歯科衛生士さんにしっかり歯磨き指導を受けて実践していれば、
歯茎や歯周ポケットの状態は、健康に保たれます。
それでも…

①歯磨きだけでは、約60%しか汚れは落とせていないといわれています。

歯の性質・歯並び・だ液の性質・生活環境・食生活・年齢…
各々の環境により様々なリスクがありますが、
しっかり歯磨きをしていても、奥歯などの見えない箇所や
歯が重なっていて歯ブラシが届かない所、歯周ポケットの奥深くなど…
気付かないうちに細菌が住処をつくり、
いつの間にか虫歯や歯周病の原因になっていくのです。

②約8時間でプラーク(歯垢)ができるといわれています。

歯垢=プラーク(細菌のかたまり)は、1g中に約300種類以上の細菌を約1000億個も含まれていると言われています。
プラークは、歯ブラシが届きにくい、歯と歯の間や歯と歯茎の隙間が大好きで、しっかり歯磨きをしていても、肉眼で見えない隙間などで虎視眈々と(息をひそめ、じっとタイミングを見計いながら)細菌を蓄積しバイオフィルムを形成しているのです。

③プラークは約48時間で歯石になり始めるといわれています

歯石は、一度出来てしまうと、歯ブラシでは落とせません。
また、歯石は、デコボコした形状なため、プラーク(歯垢)が付着しやすく、
歯周病の原因になります。
重要なのは、歯石は歯の見えるところだけではなく、目視できない箇所や歯茎の中にもできるということです。

定期検診と歯の残存率

定期健診を受けている方の歯の残存率について表したものです。
定期検診に通い、歯のクリーニングを定期的に受診している方は、自分の歯を失うリスクが軽減し、80歳になってもご自分の歯が残っている数が多いことがわかります。
鏡で見ただけではわからないプラーク・バイオフィルム、歯磨きだけでは取れない歯の汚れがあります。
歯の健康を維持するには、国家資格を持つ歯科衛生士さんに、専用の機械でしっかり汚れを除去してもらうことが大切です。
そのため、歯医者さんで定期的に検診を受けることがとても大切なのです。

全身疾患の予防につながる歯の定期検診

虫歯・歯周病の予防を促す歯の定期検診ですが、定期検診を受けずに知らず知らず歯周病に罹ってしまった場合に、歯周病が口腔内だけでなく、全身に影響を及ぼす事が分かってきました
歯周病菌そのものが全身に影響を及ぼすほどの病原性を持っているわけではないですが、歯周病に罹った歯茎から、他の菌が血液に混入しやすい状態になり、全身疾患の引き金の原因となる可能性が高くなります。
主に歯周病と因果関係のある疾患が糖尿病・心疾患・脳梗塞です。
心疾患(狭心症や心筋梗塞)・脳梗塞は、血管が狭くなり血管が詰まる事が原因ですが、歯周病菌の刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラークができ、血管の通り道を狭くする事が分かっています。
その他にも、低体重児早産・誤嚥性肺炎・骨粗鬆症・関節炎・腎炎・パージャー病などが挙げられています。
歯の定期検診は、お口の健康はもちろん、全身疾患の予防にも繋がります。

まとめ

歯周病菌により、口腔内だけではなく、身体にも影響を及ぼすことが報告されています。
世代によってお口の中の環境は全く違います。
自分では、気がつかないだけで、進行している病気があるかもしれません。
定期的なメンテナンスを受けることで、お口も身体も健康で暮らしていただきたいと思います。
田治米歯科クリニック 八尾医院ではスタッフ一同、患者様の健康を願っております。

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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