乳歯の生え変わりの時に気を付けることとは?

子供は身体の成長にともなって顎も成長し、6歳頃から12歳頃にかけて「乳歯」から「永久歯」へ生えかわります。生え始めたばかりの歯は未完成で、歯の根が完成するまでには、生えてから2~3年かかります。特にこの時期は歯質もやわらかく酸に溶けやすいため、虫歯になりやすいです。

そこで今回は、乳歯の生え変わりで気を付けることについてお話しします。

まず、その前に乳歯と永久歯の違いについて説明します。

乳歯と永久歯の違い

乳歯は20本、永久歯は32本(親知らずを含む)

歯の数は乳歯は20本、永久歯になると親知らず(第3大臼歯)も含めて32本になります。親知らずは、大体18歳以降から生えてくることが多いですが、生まれつき欠損している場合や萌出スペースが足りずに生えてこない場合が多くみられます。日本で親知らずが一生を通じて生えてこない人は、全体の4分の1くらいいるといわれています。

永久歯のエナメル質や象牙質の厚みは乳歯の約2倍

まず見た目は、乳歯は白に近く、永久歯は黄色味を帯びています。大きさは、永久歯の方が全般に乳歯よりもひとまわり大きく、永久歯のエナメル質や象牙質の厚みをはかってみると、乳歯の約2倍もあります。永久歯は一生使うものなので乳歯に比べて丈夫な作りになっています。ただし、丈夫な永久歯とはいえ、生えたての2年くらいの間は「幼若(ようじゃく)永久歯」といい、歯質、形態共に虫歯に対する抵抗性は低く、虫歯になりやすいので注意が必要です。

乳歯が生え変わる時期と永久歯の萌出時期

永久歯は6歳ごろに下の歯の第1大臼歯(6歳臼歯)が生えはじめ、14歳ごろまでに上下で28本の歯が生えそろうのが一般的です。親知らずは18歳以降から生えてくる場合が多いですが、生まれつき欠損していたり、生えてこない場合もあります。永久歯が生える少し前から乳歯はその役割を終えて抜け始めます。一般的に下の前歯から抜け始めることが多いです。

お母さんのお腹の中で乳歯・永久歯の基礎は既に作られている

あまり知られていないですが、実はお母さんのお腹の中で、赤ちゃんは乳歯と永久歯の基礎を形成します。乳歯のもとになる歯胚は妊娠7~10週目につくられ、永久歯の中で最も早く生えてくる第一大臼歯(6歳臼歯)や前歯は妊娠3~5ヶ月頃に歯胚ができ、時間をかけて成長していきます。実際に口腔内に現れるのは乳歯が生後数ヶ月後、永久歯は大体6歳頃からです。生えかわりが始まる頃には、あごの中で生える準備をしています。

永久歯へ生え変わる仕組み

あごの中(乳歯の下)で永久歯のもとになる歯胚ができ、時間をかけて永久歯へと成長していきます。永久歯の歯冠部(歯茎から出ている部分)が完成し、歯の根の部分が作られ始めると、乳歯の根を溶かす細胞が現れ、永久歯の上にある乳歯の根は少しずつ溶かされていきます。乳歯の根が溶けていくと、乳歯はグラグラになり抜け落ち、永久歯が顔を出します。

生え変わりの時期に気をつけること

生えたての歯は虫歯になりやすい

生えかわりの時期はこれから一生使い続ける永久歯を守るためにも重要な時期です。新しく生えた永久歯のエナメル質(歯の一番外側を覆っている目に見える表面の硬い層)は完全に硬化しておらず、成熟していないため、歯質そのものが未成熟なので、虫歯になりやすいです。この時期は特に保護者の方は毎日の歯磨きを念入りにするように心がけましょう。

乳歯の虫歯はそのままにしない

永久歯は乳歯の下で成長しています。いずれ永久歯に生え変わるからといって乳歯の虫歯を放置すると、その後に生えてくる永久歯の歯質や歯並びに悪い影響を及ぼします。乳歯は永久歯のためのスペースを確保し、正しい位置に導く役割を果たします。乳歯が早期に失われると、永久歯が正しい位置に生えてくるのを妨げ、咬合の問題や歯並びの問題を引き起こす可能性があります。

乳歯が抜けないまま永久歯が裏側や横から生えてきた場合

顎の骨の成長が小さく、永久歯が並ぶスペースがないため、乳歯裏側や横から永久歯生えてくることがあります。 永久歯が見えてくるとともに、乳歯がグラグラしてきているなら、自然に抜ける場合がありますので、そのまま様子をみても大丈夫です。ただし、乳歯が抜けないまま永久歯が裏側や横から生えてきたり、すき間に細菌が入って歯肉が腫れている場合は、早急に乳歯を抜く必要があります。その他に、グラグラしているのが気になって子供が物事に集中できなかったり、ご飯を食べる時に痛がるなど日常生活に支障が出る場合は、歯科医院で歯を抜いてもらうのも方法の一つです。

「6歳臼歯」は特に虫歯になりやすい

6歳臼歯は、5~6歳ごろに生えてくる、初めての永久歯。乳歯の奥にそっと生えてくるため、気づきにくい歯ですが、噛み砕くもっとも強く、永久歯の歯並びやかみ合わせの「基本となる歯」です。しかし、6歳臼歯は完全に生えるまでに約1年かかるので、その間は手前の乳歯より背が低く、普通の磨き方ではハブラシの毛先が届かず、とても虫歯になりやすいです。歯ブラシを口の真横から入れて歯にきちんと歯ブラシが当たるようにして磨きましょう。虫歯にならないためには、生えはじめの歯のときからきちんとケアしましょう。

生え変わりの時期の仕上げ磨きは念入りに

自分で歯みがきするようになっても、生えかわり期は、凸凹していて磨きにくいうえ、生えたての歯は酸に弱く、虫歯になりやすいため小学校低学年までは仕上げ磨きをしてあげましょう。奥歯のみぞ、歯と歯の間、歯と歯肉の境目が特に虫歯になりやすい場所なので重点的に行いましょう。

仕上げみがきの姿勢は、乳幼児期同様「寝かせ磨き」がおすすめです。寝かせ磨きは、子どもをあお向けに寝かせて頭をひざの上にのせ、あごを手で押さえながら上からのぞきこむようにしてみがきます。子どもが痛がらないように、軽く小刻みに動かすのがポイントです。この方法がいちばん口の中がよく見えて、ブラッシングもしやすいです。

フッ素や洗口液を活用して虫歯予防

フッ素には歯のエナメル質を丈夫にして、虫歯になりにくくする働きがあります。永久歯が生えはじめてからの約2年間は、特に虫歯になりやすく、フッ素を取り込みやすい時期です。フッ素配合歯磨き粉で磨くだけでなく、歯科医院で高濃度フッ素を塗ってもらい虫歯を予防しましょう。さらに、歯みがきをした後で、洗口液を使うのも有効です。洗口液で口をすすぐと、口のすみずみまで殺菌できて、歯垢の付着を防ぐと同時に、歯肉炎・口臭の予防にもなります。

「6歳臼歯」にはシーラントがおすすめ

シーラント処置の流れ

シーラントは健康な奥歯のみぞに樹脂をつめて、虫歯を予防するものです。溝が複雑で深くハブラシの毛先が届きにくい「6歳臼歯」にはおすすめです。シーラント処置とともに、歯医者さんで年に3~4回検診を受けて、歯みがきの仕方や歯の生えかわり、歯並びなどに問題がないかチェックしてもらいましょう。何か問題が起こっても早期発見・治療を行うことができ、お子さまの負担を軽減することができます。

まとめ

生え始めたばかりの歯は未完成で、歯の根が完成するまでには、生えてから2~3年かかります。歯質もやわらかく酸に溶けやすいため、虫歯になりやすい時期です。奥歯のみぞ、歯と歯の間、歯と歯肉の境目の虫歯になりやすい場所と「6歳臼歯」は重点的に仕上げ磨きをしてあげましょう。

虫歯予防には、お家でのケアと歯科医院での「フッ素塗布」や6歳臼歯には「シーラント」も併用して虫歯になりやすい時期を乗り切りましょう。

一生使い続ける永久歯を守るためにも生え変わりの時期からのケアが重要です。

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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