歯に優しいクリーニング「パウダーメンテナンス」とは?

これまで歯のクリーニングでは超音波スケーラー(注水下で超音波振動を利用して歯の表面に付着した歯石やバイオフィルムを粉砕、洗浄する器械)を使って取り除くことが一般的でした。しかし、その独特な音が苦手という方や歯茎の深い部分までお掃除する場合、状態によっては痛みを感じるという傾向にありました。

今回は、これまで歯医者さんでのクリーニングがどうしても苦手だった方へぜひ知ってほしい新しいメンテナンス方法である「パウダーメンテナンス」のご紹介です。

歯のメンテナンスはなぜ必要?

歯を細菌から身を守り、健康な状態を維持するためには、メンテナンスが欠かせません。患者さんによるセルフケアが重要なのはもちろんですが、セルフケアでは「バイオフィルム(歯にこびりついた細菌の塊)」の除去は困難です。それは、バイオフィルムが抗生物質や防腐剤を通さない強靭なバリアで覆われているため、歯ブラシやデンタルリンスで除去することが難しいためです。そこで歯科医院によるメンテナンスやSPT(周病安定期治療)を代表とするプロフェッショナルケアが必要になってきます。?

バイオフィルムとは?

歯垢(プラーク)が口腔内に長時間留まって、細菌同士がくっついて膜のようになったものをバイオフィルムといいます。お口の中にいる細菌は自らが作り出す菌体外多糖(グリコカリックス)によってバリアーを張っています。このバリアーに守られている細菌の集合体は直接歯面に付着できない菌も他の菌の仲介によって存在することができるようになります。お互いに協力、拮抗し合うことで細菌の共同体は安定状態となります。細菌は、このバリアーの中にいる限り細菌を攻撃しようとする白血球や抗体などから守ることができるのです。

除去しないと虫歯や歯周病の原因に

歯の表面にバイオフィルムができてしまうと、歯のエナメル質が唾液に触れなくなり唾液による洗浄作用がなくなります。そのため、バイオフィルムで守られた内側は細菌が繁殖しやすい環境になり虫歯や歯周病の原因となってしまいます。歯周ポケット内部でバイオフィルムが増殖すると細菌を攻撃する白血球や抗体が登場しますが、細菌はバイオフィルムのバリアーで保護されているため、それらの攻撃は受けません。逆に白血球の産物による病原因子や内毒素により歯肉が破壊され歯肉の炎症はさらに拡大します。

※「歯周ポケット」…炎症を起こして深くなった歯肉溝のこと

「バイオフィルム」の除去が必要

バイオフィルムは抗菌剤などの化学療法には抵抗性を持っているので、超音波スケーラー等の機械的な破壊と除去が必要です。しかし、これまでのメンテナンスの課題として以下の物が挙げられます。

  • 歯と歯の間、歯周ポケット内のメインテナンスは目視がしにくいため効果的な清掃が難しい
  • デリケートな歯周ポケット内は、歯や歯茎を損傷させやすい。
  • スケーラー(歯石の除去に使う、金属製の道具)やブラシなどの機器では、届かない箇所の汚れは除去できない。

そこで、歯に優しく歯周ポケット内の汚れに効果的に届く方法として「パウダーメンテナンス」が注目されています。

パウダーメンテナンスとは?

パウダーメンテナンスは、細かなパウダー状にした炭酸水素ナトリウム(重曹)やグリシン(アミノ酸の一種)を強力なジェット水流で歯に吹き付けて汚れを落とします。茶渋やタバコのヤニといった着色や、歯周病の原因となる細菌の固まりのバイオフイルムまでもすみずみまで落とすことができ、よりスピーディで効果的なクリーニングが可能です。

※固くなった歯石(プラークが石灰化して硬くなったもの)の除去には超音波スケーラーが必要な場合があります。お口の中をチェックした上で、お口の状態に応じて判断します。

パウダーメンテナンスの特徴

器具が歯に触れないので傷つかない

金属のチップを使ったクリーニングでは歯を傷つけたり回転器具を使った研磨では、歯の表面をこすりすぎていることが明らかになりました。パウダーメンテナンスで使用するパウダーはわずか0.15mm。器具が歯に触れないため他の方法と比較して最も歯の表面に傷をつけないことが実験でも明らかになっています。

◉歯ブラシが届きにくい部分も清掃が可能

通常のクリーニングでは、金属のチップを使って歯石を取り研磨剤を使って歯をブラシでこすります。このため、ブラシや器具が届きにくい部分は綺麗になりません。一方、パウダーメンテナンスではパウダーと水を吹き付けるだけで通常の器具が届きにくい隙間にも水と空気の力で汚れを取り除きます。

◉セラミック・金属・インプラントにも対応

金属のチップは、金属やセラミックはもちろんインプラント表面にも傷をつけるためこれらの表面に器具を当てることは出来ません。しかし、パウダーメンテナンスは器具が直接歯に触れることがなく歯を傷つけないためすべての被せ物や天然歯の表面を綺麗にすることができ、インプラント治療後のケアにも有効です。歯ブラシではどうしても取り切れない細かな汚れも、水とパウダーで除去することができます。

「インプラント歯周炎」の予防に最適!

「インプラント歯周炎」とはインプラント周辺の組織が歯周病に感染した状態を言います。天然歯に比べインプラントは炎症への抵抗力が低いため、お口の中で汚れが付着すると細菌が繁殖しやすく一度細菌感染を起こすと骨吸収(歯を支える骨である歯槽骨が溶ける)が急速に進行します。自覚症状が出にくく気が付いたときには重症化しているケースも多いため、日頃のメンテナンスによる感染予防が重要となります。

着色の除去も簡単

保険診療は、歯石除去と着色除去は分けて処置することになります。パウダーメンテナンスでは、歯周病、虫歯の原因となるバイオフィルム・着色を一緒に取ることが可能です。歯の黄ばみやタバコのヤニなど、着色が気になる方にもオススメです。

◉汚れをスピーディーに落とせる

パウダーメンテナンスは、スピーディーに汚れを落とすことが可能なため、これまでのクリーニングに比べて短時間でツルツルの歯を手に入れることができます。歯がツルツルになると汚れも付きにくくなるため、パウダークリーニング後の歯磨きは、いつもの歯磨き時間より短い時間できれいに磨くことができます。

まとめ

歯の汚れのつき方には個人差もありますが、通常は3~6ヶ月に1回のパウダーメンテナンスをオススメしています。クリーニングには通いたいけど、今までのクリーニングは苦手と感じている方にぜひオススメです。

最も効率の良い、歯に優しいクリーニングとしてパウダーメンテナンスを虫歯や歯周病予防に始めませんか?

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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