虫歯予防に大切な「ステファンカーブ」を知っていますか?

皆さんは「ステファンカーブ」という言葉を聞いたことがありますか?

虫歯予防には、適切な歯磨きや定期的な歯科検診が欠かせません。しかし、これらに加えて「ステファンカーブ」について知っておくと、より効果的に虫歯を防ぐことができます。

今回は、この「ステファンカーブ」についてお話しします。

ステファンカーブとは?

ステファンカーブは、口腔内のpH値の変動を示したグラフです。pHとは、酸性とアルカリ性の度合いを表したもので、pH値は食事をとるごとに変化します。お口の中のpHは、普段はpH7の中性に保たれています。しかし何かを食べたり、飲んだりするとお口の中のpH値は酸性に傾いていきます。そしてこのpH値が5.5以下になると歯が溶け始める「脱灰」が始まります。

脱灰と再石灰化のバランスが虫歯の進行を決定する

「脱灰」が繰り返されると虫歯になる

ステファンカーブを見てもわかるとおり、私たちの口内では、食事をするたびに歯を溶かす「脱灰」と、修復を行う「再石灰化」が繰り返されています。虫歯の原因菌は、炭水化物や砂糖などを原料として、プラーク(歯垢)と呼ばれる物質をつくり、その中で増殖しながら酸をつくり出しています。その酸によって、歯のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出すことを「脱灰」と言います。間食が多いと「再石灰化」が起きるまでにまた「脱灰」がおきてしまい、常にお口の中は酸性に傾いてしまい、虫歯になりやすいお口の環境になってしまいます。

唾液が「再石灰化」をサポート

脱灰が進行しても口の中の唾液が、細菌の作り出した酸を中和して洗い流したり、溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す働きをしてくれます。これを「再石灰化」といいます。唾液の力などにより、だいたい、中性に戻るまでに約20分〜1時間ほどかかるといわれていますが、再び何かを飲食すると酸性に傾むき「脱灰」が始まります。「脱灰」が促進されるような口内環境が続くと、再石灰化の修復スピードが追いつかず、虫歯リスクが高まります。しかし、歯に穴があく一歩手前の「初期虫歯」の段階であれば再石灰化で修復することができます。

虫歯リスクを減らすポイント

食後の歯磨きをする

食後に歯を磨くことで、口の中の汚れを落とし、虫歯菌が繁殖しにくい環境をつくることが大切です。食後は歯磨きでお口の中の汚れを減らしましょう。その時にデンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、歯ブラシが届きにくい場所の汚れも落とすことができます。

唾液の分泌を促す

唾液には、口腔内の酸性度を中和する働きがあります。唾液の分泌を促すことで口腔内の環境を改善することができます。十分な水分摂取や、ガムを噛むことで唾液の分泌を促しましょう。ただし、ガムは無糖やキシリトールの入っているものを選ぶことが重要です。

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口に入っている時間が長いお菓子は要注意

砂糖を使ったアメやチョコレートのようにいつまでも口の中に残るものや、口の中で溶けて歯にくっつきやすいキャラメルなどは、虫歯の危険度が高いと言えます。特にアメは糖分が口の中に広がり、歯のすき間にも入りやすく、虫歯のリスク高いお菓子です。

ちょこちょこ食べは控える

食事の回数が多かったり、間食やおやつが多いと口腔内のpH値が酸性の状態が続き、唾液による再石灰化作用が追いつかずに、脱灰が進行し虫歯になりやすくなってしまいます。

  • 砂糖を使用した飴やガムが常に口に入っている
  • 糖分の含まれた飲み物(コーヒーなど)・炭酸飲料(コーラなど)を少しずつ飲む。
  • 常にお菓子を持ち歩き食べてしまう。

など、日常の生活習慣によって虫歯のリスクを高めてしまいます。おやつを食べることが問題ではなくて、時間をあけずにちょこちょこ食べてしまう事が虫歯をつくってしまう原因です。

フッ素は「再石灰化」を促進する

虫歯予防に効果的なフッ素には、「再石灰化」のスピードを速める効果があります。さらに、その「再石灰化」によってフッ素が歯の表面に取り込まれると、「フルオロキシアパタイト」という通常よりもさらに硬いエナメル質の結晶が作られます。最近では、市販の歯磨き剤の多くにフッ素が含まれていますが、さらにその効果をUPさせるには歯科医院での定期的な「フッ素塗布(高濃度)」がおすすめです。歯医者での定期検診と一緒に3〜4か月に一度フッ素塗布を受けましょう。

まとめ

お口では、常に「脱灰」と「再石灰化」が繰り返され、双方がバランスをとりながら歯の健康を維持しています。そのために食事の間隔をあけること、そして口腔内環境を健康に保つことが重要です。健康な歯を守るためにステファンカーブを知って、普段から虫歯予防に意識を向けましょう。歯が溶けてしまう「脱灰」の時間を減らせるように間食の回数は、極力減らしましょう。

虫歯は、初期虫歯であれば「再石灰化」で修復可能です。「再石灰化」を促すためには、唾液の分泌を促したり、歯科医院での定期的なフッ素塗布が効果的です。虫歯から大切な歯を守りましょう。

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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