「お口がポカンと開いたままになっている」「食べる時にくちゃくちゃ音をたてる」お子さまにこのような癖や習慣はありませんか?成長期の子どもの顎や歯並びは悪い癖の影響を受けやすいです。大きくなればなるほど、癖もやめづらくなってしまいます。
歯科医院では、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼす癖や習慣、行動を改善する「MFT(Oral Myofunctional Therapy)」(口腔筋機能療法)というトレーニングを行っています。今回は、このMFTについてご紹介します。
ではその前に、歯並びや噛み合わせを悪くする生活習慣やクセはないかチェックしてみましょう。
目次
歯並び・咬み合わせを悪くする生活習慣やクセとは?
2つ以上あてはまる項目がある場合、歯並び・咬み合わせを悪くする癖がある可能性があります。
- 口をポカンと開けていることが多い
- 無意識だと舌が前に出ている、もしくは下の前歯に触れている
- 食べこぼしが多い
- クチャクチャ音を立てて食べる
- 食事に時間がかかる
- あまりよく噛んで食べない
- 硬い食べ物が苦手
- 発音が気になる(タ・サ・カ・ラ行など)
- 指しゃぶりをしている
- 頰杖をつく
- 猫背である
- 口呼吸をしている
舌癖(ぜつへき)には要注意
上記の中でも特に気をつけたいのが、口をポカーンと開けて舌が出ている、舌が歯に触れているといった「舌癖」です。舌癖(ぜつへき)とは、舌で上の前歯の歯の裏側や、下の前歯の歯の裏側を押している、または、歯と歯の間から舌をだしてしまう舌の癖のことをいいます。たとえば、舌先で前歯を押すような位置に舌先があると、歯が前に出てくる可能性があります。また、矯正治療中に舌癖が見られると、歯に偏った圧力がかかることで歯の移動が上手くいかなかったり、治療後に後戻りしてしまったりするケースもあります。
口の中での舌の正しい位置
舌の位置は、舌の先端は「スポット」と呼ばれる前歯の裏側にある歯茎と歯が接するギリギリの場所に軽く触れ、舌全体が上顎に付いた状態が正しいです。 舌先がスポットの位置になく歯に当たる位置にあると、歯が生えるのが妨げられたリ、歯並びや咬み合わせが乱れる原因となります。また、不適切な舌の位置が続くと、顎の発達、顔の筋肉のバランス、呼吸の質、さらには姿勢にも影響を及ぼすと考えられています。しかし、舌の位置を正しい舌の位置に改善することで歯並びなども自然に整ってくることがあります。そこで舌の位置を改善するためにMFTトレーニングというものがあります。
歯並びを悪くする癖を改善するトレーニング「MFT」
MFTは、食べる(咀嚼)時、飲む(嚥下)時、発音時、呼吸時の舌や口唇の位置の改善を目的としたトレーニングです。MFTを継続して行うことで歯並びに関係している舌、唇、頬などの口腔周囲筋を正常な環境に整え、癖を直すことができます。特に指しゃぶりと舌癖は、MFTでの症状改善が大きく期待できます。
MFTは子供から高齢者までメリットがある
MFTは主に、小児矯正の分野で用いられることが多いです。その理由は、大人は骨や歯の成長が止まっているのに対して、子供は成長過程にありMFTによって改善が期待できるからです。しかし、大人もMFTを行い口腔習癖を改善することで、矯正歯科治療がスムーズに進み、矯正装置を外した後の歯並びおよび、噛み合わせの安定に効果があります。さらに近年は、歯並びや噛み合わせだけでなく年齢による口周りの筋肉の衰えで食事や水分などがうまく食べられない・飲み込めないような状態が懸念される高齢者の方にも、老化予防としても取り入れられています。
MFTの3つの要素
①舌、唇、咀嚼筋の機能改善
舌、唇、咀嚼筋(そしゃくきん)の筋肉の機能改善をはかります。筋肉の力を強めるだけでなく、筋肉をリラックスさせ、全体的に調和のとれた状態を目指します。
②咀嚼・嚥下・発音・呼吸の訓練
これらの動作をする際、口腔周囲筋がかける筋圧を適正化し、正しく動作ができるようにします。それと同時に、歯並びの悪化を防ぎます。
③唇と舌を正しい位置にする訓練
リラックスしている状態に「唇と舌がいつも正しい位置にある」ことを目指します。この訓練は特に歯並びに影響を与えるといわれています。
唇を閉じたぶくぶく「うがい」も筋力強化になる
日常生活の中での「うがい」も実は効果的です。唇をしっかり閉じて、周りに音が聞こえるぐらい強くブクブクうがいをします。毎日続けることで、唇や舌の筋力強化につながります。
日常生活でもできること
- 口呼吸するのではなく鼻呼吸をする
- 猫背にならないように姿勢をまっすぐに整える
- 口を閉じた状態の時には、上下の歯はほんの少し離すようにする
- 食事をする時には首をまっすぐにして口を閉じ、左右の奥歯でバランスよく咬む
- うつぶせ寝ではなく、仰向けで寝る・・・など
歯並びに影響する悪癖を直すためには、まずは日常生活の見直しが必要です。頬杖や呼吸の仕方など、ちょっとした癖を直すことでも効果があります。習慣化にかかる期間は平均66日(約2ヶ月)だといわれています。毎日継続して良い習慣を身につけていきましょう。
まとめ
好ましくない癖があると、矯正治療がスムーズに進まなかったり戻ってしまったりする可能性が高くなります。癖は年齢が大きくなればなるほど治すのが難しくなります。知らず知らずのうちに変な癖をつけないためにも、小さな頃から適切なトレーニングを行うのが理想です。
MFTは、舌や口周りの筋肉のバランスが保たれるので、歯並びの改善や悪化を防ぐことが期待できます。お子さまの癖や歯並びが気になる方は、一度小児歯科または矯正歯科を受診して、矯正治療が必要かどうかを診断してもらうことをおすすめします。
当院の予防矯正・小児矯正についてはこちらをご覧ください。
記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二