妊娠中のママの食生活で大切な子どもの歯は強くできる

赤ちゃんの歯は妊娠のとても早い時期から作られることを知っていましたか?子どもの歯と呼ばれる乳歯はもちろん、大人の歯と呼ばれる永久歯も作られ始れているんです。

妊娠中のお母さんの健康状態や、体内に取り入れられる食事の内容次第で赤ちゃんの歯の健康が大きく変わってきてしまいます。

今回は、大切な子どもの歯を守るためにママが気をつけなければいけない事についてお話させていただきます。

歯の健康の始まりはお腹の中から

赤ちゃんの歯の基礎づくりはお腹にいるときから作られ始めています。歯にはほとんど新陳代謝がないので一旦でき上がってしまうと、あとからいくら必要な栄養素を補っても歯は取り入れてくれません。歯が作られる時期に歯に大切な栄養素をきちんと摂れるかどうかが大切です。

乳歯の芽は妊娠7週ごろに作られる

赤ちゃんの歯は妊娠7週ごろには乳歯の歯胚(歯の元となる芽のようなもの)が形成されています。妊娠から4〜5ヶ月が経つと赤ちゃんの形成中の乳歯は、石灰化(硬くなること)が始まります。そして乳歯の生える準備ができると永久歯の石灰化も始まります。このように、ものすごいスピードでお腹の中にいる間に赤ちゃんの歯は形成されていきます。

赤ちゃんの歯の強さは石灰化の進み具合で変わる

歯をつくるのに欠かせない栄養素としては、 タンパク質、ビタミンA、D、B1、B2、C1、ニコチン酸、鉄、ヨウ素、マンガン、亜鉛、フッ素などがあり、 歯の大部分をつくる石灰分がカルシウムとリンから成り立っています。ママがこれらの歯を作る栄養素を充分に摂取できていれば、石灰化もスムーズに進み赤ちゃんの歯を強くすることができます。

石灰化を助けるリンとカルシウムを積極的に取り入れよう

赤ちゃんの歯を強くするためにも妊娠中は歯の石灰化を助けるミネラル成分、つまりリンとカルシウムが多い食事が大切。チーズや牛乳などの乳製品やひじきや小魚などの海産物などから上手に摂取していきましょう。カルシウムとリンのバランスが重要でどちらかが不十分だと吸収も悪くなることがわかっています。

日本人はリンに比べてカルシウムが不足している

現在の日本の食生活では加工食品の利用が増えていることに伴って、食品添加物として使われている各種リン酸塩の摂取が多くなっているため、リン欠乏よりもむしろリンの過剰摂取の方が問題となっています。

逆にカルシウムは平成30年国民健康・栄養調査によると、日本人の平均的なカルシウム摂取量は少なく20代女性で384mg/日、30代女性で441mg/日となっています。この年代の女性のカルシウム摂取推奨量は650mgですから、妊娠にかかわらず日頃から意識的にカルシウムを摂取することが必要です。

健康的なバランスのとれた食事が子どもの歯の形成に大切

豊富なカルシウムを含むものとしては、ニボシ、メザシなどの小魚がオススメです。骨ごと食べることができさらに脂質、タンパク質、リン、フッ素、ビタミンDなどを多く含んでおり、理想的な「妊婦食」といえます。赤ちゃんのためだけでなく、ママ自身の健康の為にもカルシウムやリンを含む五大栄養素をバランスよく取り入れていきましょう。

私たちの歯はこのようにカルシウムやリンなど多くの栄養素で作られる事がわかりました。そして歯の種類は大きく分けて2種類あります。子供の歯と呼ばれる乳歯と大人の歯と呼ばれる永久歯、この2つの歯に違いはあるのでしょうか?

乳歯と永久歯の違いとは?

歯のしくみはほぼ同じですが乳歯は柔らかく永久歯は一生使うものなので、丈夫な作りになっています。永久歯のエナメル質や象牙質の厚みをはかってみると、乳歯の約2倍もあります。また、数も乳歯は20本だったのが、永久歯になると親知らずも含めて32本まで増えます。

乳歯の生え始めは、生後6ヶ月ごろ

乳歯が生えてくるのは生後6ヶ月ごろからです。3歳ごろまでに上下合わせて20本が生え揃います。乳歯の歯は永久歯に比べると柔らかく、一度虫歯になると進行が早いので注意が必要です。

永久歯の生え始めは、6歳ごろ

最初の永久歯である第一大臼歯が生え(最近では第一大臼歯ではなく下顎の中切歯が一番早く生えるケースも報告されています)始めます。永久歯は6歳前後から12歳頃にかけて、乳歯から丈夫な永久歯への生え代わりが進み32本の永久歯が生え揃います。(親知らずを含む)

子どもの歯の為にママが気をつけるべきこと

●口移しや同じ食器を使うことは避ける

生後19〜31ヶ月は”感染の窓”とよばれています。この時期に子どもの口に虫歯菌が感染すると、特に虫歯になりやすいといわれています。同じ食器を使うことで大人から子どもへの感染リスクを増やしてしまいます。

“感染の窓”を乗り越えると虫歯になりにくいという統計もあり、この時期にママをはじめ家族の口の中にいる虫歯菌をいかに減らすかが虫歯予防にとって重要なことがわかります。

●子どものだらだら食べ

食物を食べるとお口の中は酸性に傾き、少しずつ歯が溶け始めます。
これを「脱灰(だっかい)」といいますが、唾液には酸を中和して、脱灰した歯の表面を修復し歯を強くする「再石灰化」の働きがあります。


だらだら食べていると脱灰の時間が長くなり、虫歯になりやすい環境になってしまうのです。食事とおやつの時間を決め、なにも食べない時間を作り再石灰化の時間を長くすることが虫歯予防には大切です。

●6歳臼歯の虫歯は特に要注意

6歳ごろに乳歯の奥に最初の永久歯である第一大臼歯いわゆる「6歳臼歯」が生えます。これは、物を噛み砕く力が一番大きく、永久歯の歯並びや噛み合わせの基本となる重要歯です。ただ、口内の奥に生えて溝が深く歯みがきがしづらいため特に虫歯になりやすい歯です。

生えて間もない永久歯は、酸に対する抵抗性が低く虫歯になりやすい

永久歯は生えたての2年くらいの間はまだ弱く、虫歯になりやすいので注意が必要です。未熟な永久歯は、唾液中のミネラル成分によって徐々に成長するので、よく噛んで唾液がたくさん出るように食事をしましょう。

小学校高学年くらいまでは「仕上げ磨き」をしてあげましょう

6歳以降は乳歯と永久歯が混在している「混合歯列期」に入ります。この時期は歯の高さが違っていたり、抜けた歯があるなど、みがき残しができやすくなります。 小学校高学年くらいまでは「仕上げ磨き」などの重点的なケアが必要です。きちんと歯を磨けているか一緒にチェックをしながら歯磨きのサポートしてあげましょう。

「仕上げ磨き」も大人1人だと磨き方にどうしても偏りが出てきてしまうので、ママとパパで交代しながら磨いてあげるのがオススメです。

乳歯の虫歯は永久歯に影響を及ぼす

乳歯は永久歯に生え変わるから虫歯があっても放っておいて大丈夫だろうなと思っている方はいませんか?乳歯の虫歯を放っておいてしまうと、永久歯の歯胚が傷付いて永久歯が変色したり歯が動いて永久歯が生えるスペースがなくなり、永久歯が変な場所に生えてきたりします。

乳歯の虫歯で永久歯に悪影響を与えてしまわないように、お子さまの口の中の状態はこまめにチェックしてあげてください。

まとめ

子どもの健康な歯を作るのは、お腹にいる時からのママの食生活が重要です。特に妊娠中は栄養素を赤ちゃんに送るので、いつも以上に栄養をたくさん摂る必要があります。赤ちゃんの為だけでなく、ママの健康の為にもバランスのとれた食事を意識してみてください。

そして、乳歯や永久歯が生えてからは仕上げ磨きで重点的にケアをしてあげましょう。自分だけで不安な方は、歯医者さんで定期検診してもらいましょう。

妊娠中は不安でわからないことがたくさんあると思います。当院では、ママのためにマタニティ歯科もご用意してます。お気軽にご相談してくださいね。

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二


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