習慣化した子どもの癖で歯並びや噛み合わせが変わる

前回の記事で子どもの歯は、ママのお腹にいる妊娠7週目からでき始め、ママの食生活が子どもの歯の形成に大きく関わっている事や永久歯が生え始める時までにママが気をつけるべきポイントについてご紹介しました。

今回は、同じ頃の子どもの歯並びや噛み合わせに注目をしていきます。歯並びや噛み合わせに大きく関わるもの、それは習慣的な癖です。影響を与える子どもの癖の種類と気をつけなければいけない事についてまとめていきます。

正しい噛み合わせでよく噛む事の大切さ

まず、子どもたちの体の発育や機能維持増進に関わる「噛む」という動作。噛む事が運動能力や脳の発達を促すことも知られており、正しい噛み合わせでよく噛むことは、子どもたちの心と体の健康増進に繋がります。実際、よく噛む人は年齢に関係なく全身の健康状態が優れていることが実証されています。

子どもたちの正しい噛み合わせには、現在の歯列(歯並び)・咬合(上下の歯のかみ合わせ)の状態を把握し、問題があればできるだけ早期に対応をしていくことが大切です。

歯並びや噛み合わせに影響を与える子どもの癖

歯並びは、外側の唇や頬の筋肉と内側の舌の筋肉との圧力のバランスによって 正しい位置を保っています。舌の動きや位置が正しくない状態にあると口腔機能(噛む、飲み込む、話す、呼吸、表情など)が正常に機能せず、 噛み合わせがずれていき歯並びが悪くなります。

よくない生活習慣や姿勢があると口腔周囲の筋肉や組織を通じて歯に異常な力を伝えることになり、歯並びや噛み合わせに悪い影響を及ぼします。習慣になっている癖やよくない生活習慣がないかをチェックしましょう。

口腔習癖(口に関する習慣的な癖)

噛み合わせや歯並びを悪くする原因の中で、意外に大きな影響を及ぼしているのが、日頃の癖や生活習慣です。

口呼吸

正しい呼吸の方法は鼻呼吸ですが、口で呼吸している状態が口呼吸です。外から侵入してきたバイキンを処理する役目があるアデノイド(咽頭扁桃)と口蓋扁桃(こうがいへんとう)は、免疫システムがまだ整っていない幼児は腫れやすく、口呼吸になりやすいです。

腫れたアデノイドにより空気の通り道である「気道」が狭くなることで、鼻呼吸だけでは苦しくなり、口呼吸をする癖がついてしまいます。

口呼吸が長期にわたると、安静時に口がポカンと開いていることで舌が低い位置になり、上あご(口蓋や上顎前歯)へ舌圧がかからなくなり、上あご歯列の狭窄や開咬など歯列への影響が見られるようになります。特に子どもの場合は、骨格にも影響が出やすいため注意が必要です。

舌癖(ぜつへき)

「口をポカーンと開けて舌が出ていたり」「飲み込む時に舌を出す」などの動きをすることを舌癖(ぜつへき)と言います。舌が下がっている状態を「低舌位」といいます。低舌位によって舌で歯をいつも触っている(押している)状態だと歯は動かされ、受け口(反対咬合)や上下の前歯がかみ合わない状態(開咬)になっていきます。

舌は通常、上あごのくぼみ(口蓋=こうがい)にくっついている状態が自然です。食べものを飲み込むとき、常に舌は口蓋にくっついているものです。お子さまの舌の位置が下がっていないか、チェックをしてみてください。

指しゃぶり

指しゃぶりをしているとき、指をくわえる力によって上の前歯は前方に押し出され、下の前歯は舌の方へと押さえつけられます。指しゃぶりの激しい場合には、かみ合わせや歯並びへの影響は永久歯列にまで残ってしまいます。

乳児の間だけ指しゃぶりをしているなら、大きな問題はありません。しかし、3歳以降も続くと、かみ合わせが悪くなる不正咬合(ふせいこうごう)を起こす可能性が大きくなります。歯並びに悪影響を及ぼさないためにも、遅くても4歳までには癖を治しておきましょう。

噛み癖

爪を噛む、唇を上下の前歯の間に挟んでかみ締める癖、鉛筆やタオルなどの物を長時間噛み続けたり、いつも同じ側だけで噛む、無意識に力強くかみしめる癖(食いしばり)などを噛み癖といいます。偏った力をかけ続けることで歯の向きだけでなく、あごの歪みにもつながります。

態癖(全身に関連した習慣的行動)

頬杖をついたり、悪い姿勢で食事をしている人や猫背なども、噛み合わせの左右のバランスが崩れやすくなります。その結果、顎の痛みといった顎関節症の症状や歯ぎしりや食いしばりが出ることがあります。

そのほか、うつぶせ寝、横向き寝などの寝方も癖になってしまうと歯並びに影響を与えてしまいます。日頃の偏った癖は、長期間続ければ続けるほどやめづらく、影響もその分大きくなります。

長期間の癖は骨整形まで必要なこともある

乳歯列期(6歳ごろ)までは習癖による影響はそれほど強くは現れてきませんが、学童期まで続けて顎の骨の大きさや歪みにまで影響を与えてしまうとワイヤー等を用いた歯列矯正だけでは治療が難しくなります。 そのような症状の場合にあごの骨を切って動かすなどの外科手術が必要となってきます。

重症化する前に、長く続けている癖や気になる癖を見つけたら、治してあげましょう。治りにくい癖については、なるべく早くかかりつけの歯医者さんや専門の歯科医に相談してみましょう。

正しい歯並びは癖を直すところから始まる

子どもの成長とともにお口の中もどんどん変化していきます。その時によくない癖を長期間続けていると歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼします。

特に、口呼吸の子どもは唇や舌の力が弱いとされています。唇や舌を含めたお顔全体の筋肉トレーニングをおこない徐々に口の周りの筋力を高めていくことが大切です。

予防矯正でお口の癖を直そう

歯並びに影響するお口の癖を直すために予防矯正というものがあります。予防矯正は、3〜8歳ごろのお子さまを対象に歯並びの土台作りをする前に舌の位置や、口呼吸、飲み込み方などの歯並びや噛み合わせに影響している癖を直す矯正治療のことです。

取り外し可能な、柔らかい素材のマウスピースを使用し、子どものお口の周りの筋肉と舌を鍛え、“正しい機能”に改善する機能訓練【口腔筋機能治療(MFT)】を行い、大人の歯に生え変わった時に綺麗な歯並びへと導きます

予防矯正について詳しく知りたい方はこちら。

矯正治療を子どもの頃にするメリット

口腔悪習癖があると歯科矯正の治療期間自体も長引くことがあり、余分に時間とお金がかかってしまいます。癖も長く続けば続くほど治りにくいため、習慣になる前に癖を治す事が重要です。

予防矯正は3〜8歳くらいまでの低年齢のお子さまに向けた矯正治療ですが、子どもの頃にする矯正治療にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

顔のバランスが整えられる

歯並びにはあごの骨格の問題が関係していることがあり、顔つきにも影響を与える可能性があります。上あごと下あごのズレが著しいと、将来的に外科手術が必要になってしまうケースもあります。早い時期に治療を行えば成長に合わせて上下のあごのバランスを調整できるので、このようなリスクを減らせます。

子どもの負担を軽減

早い時期に歯並びに影響するよくない癖を直すことで、歯並びの不正の程度が軽減され、永久歯に生え変わった後の治療が不要になったり短期間で済むといったケースは多くあります。そして「見た目」が気になる時期に矯正器具をつけずにいられることは、子どもの大きな負担軽減になります。

矯正による抜歯を避けられる

大人になってからあごを大きく拡大することはできないため、スペースを作るために抜歯などの処置が必要です。しかし、子どもは大人よりあごの骨が柔らかいため、あごの成長を促して永久歯がきれいに並ぶ土台を作れます。あごの成長を正しい形に促すことで、大人になって矯正が必要となった場合でも、抜歯の可能性をかなり減らすことができます。

まとめ

習慣的な癖は歯並びや噛み合わせに大きく影響します。お子さまの癖に早い段階で気づき、対処することができれば将来的に矯正で大きな治療を受ける必要もなくなり、負担をできるだけ軽く出来ます。

大切なお子さまの歯をキレイにするためには、ママとパパや周りの大人たちのサポートが必要です。日頃から歯の状態だけでなく、気になる癖も合わせてチェックをしていきましょう。

歯並びの中には矯正治療をしなくても、将来的に自然に整っていく場合もあるので、自己判断せず歯医者さんで診てもらうことをオススメします。

記事監修 Dr.鳥居 健二
田治米歯科クリニック 八尾医院
院長 鳥居 健二

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